水曜日の四十路
おしゃれな曜日
「おしゃれな曜日」というのが存在するらしい。
おしゃれなネーミングに使われる曜日はなぜか「水曜日」が多い。
女性に大人気の雑貨屋さんは「水曜日のアリス」だし、「水曜日のカンパネラ」というミュージシャンもいる。
週の真ん中にちょっと気分をリラックスさせましょう、みたいな裏のメッセージが疲れた現代人の機微をくすぐるのだろう。
そう考えると、なかなか定着しない「プレミアムフライデー」も、水曜日に移動させたほうが市民権を得る可能性があるのかもしれない。
「水曜日のネコ」が好き、という女子
水曜日のネコは女子に人気が高いらしい。
女子人気とはいっても突然ブームに火がついたわけではない。
2012年に発売し、着実に売上を伸ばしてきた。
ベルジャンホワイトエール、つまりベルギースタイルの白ビール製法に基づいて作られており、爽やかな飲み口のなかにもオレンジピールとハーブのアクセントを忍ばせる。
このふくよかな酸味は、若者がビールを敬遠する理由とは真逆のアプローチだ。「飲んでるうちにこの苦味の良さが分かってくるんだよ~」と酒好きオヤジから説教されるまでもなく、最初から美味しい。
気になってしまうネーミング
水曜日の夜、可愛いネコのイラストが描かれた缶ビールを一口。
よし、あと2日頑張って働くぞ。
いやまあ本当はそんな「働く女性を応援」チックなコンセプトじゃないんだろうけど、「飲み手」がそう解釈して好きになってくれるなら結果オーライではないだろうか。
「水曜日のネコ」の製造元であるヤッホーブルーイングの手がけるブランドは他にも「僕ビール、君ビール。」や「インドの青鬼」など、ハイセンスなネーミングが光るものばかり。
クラフトビールといえば一部のビール愛好家がビール専門店で嗜むようなイメージがあったが、宅飲み層の一般消費者とクラフトビールとの距離を一気に近づけた功績も大きい。
2018年1月には深夜アニメ「たくのみ。」にも登場。
このアニメは酒の名前がそのまま各話のタイトルになっているのだが、第1話「エビスビール」→第2話「焼酎ハイボール」ときて第3話に「水曜日のネコ」。国民的な定番ブランドと肩を並べる大抜擢だ。
一見ビールっぽくないネーミングセンスがむしろオタクのマインドと噛み合いそうで感触が良い。
苦くなく、飲みやすい
苦くない「水曜日のネコ」。だが、私はこのビールに苦い思い出がある(座布団ください)。
このビールが発売された頃、金欠だった私は週1で、近所のコンビニの夜勤バイトをしていた。
水曜日のネコが入荷された当初、少なくとも自分のコンビニではあまり売れてなかった記憶がある。
初回に2ケースほど発注しただけなのだが、最後の2、3本が無くなるまで半年以上かかったのを覚えている。
暇な時間帯に棚のレイアウトを考える夜勤の立場としては、「この3本が売れたら新商品入れるスペース空くのになあ」ぐらいにしか思ってなかった。
だから、今年に入ってから飲み仲間達が水曜日のネコ、水曜日のネコ、とチヤホヤするようになったのをみて、
「そっかー、まー、ここ数年でIPAとかのブームも起こったし、クラフトビールの奥深さがやっと理解されてきたか…」
と感慨に浸っていたのだが、ヤッホーブルーイング自体は2012年の時点で既に著しく業績を上げている真っ最中だったようで、なんのことはない、仲間も含めて、私の住んでいる地域がたまたま保守的なタイプの酒飲みしかいなかっただけなのだ。
四十路の晩酌
私自身、もっと流行に敏感でおしゃれな街に住んでいれば、「水曜日のネコ」の魅力にいち早く気付くことができ、「絶対美味しいからとにかく飲んでみて!」と周囲に布教していくアーリーアダプターの側に回れていたかも知れない。
オジサンが多い街ではやはりオジサンと同じ酒を飲む。
「朱に交われば赤くなる」を身をもって実証したことになる。
今では、失われた青春を取り戻すかのように、立ち寄ったコンビニにクラフト系の缶ビールがあれば無意識に購入している自分がいる。
ちなみに一番最近「水曜日のネコ」を飲んだのは確か土曜日。
本当は水曜日に飲みたいが、40歳を過ぎると、二日酔いが気になる。
青春は思った以上に遥か遠くに過ぎ去っているようだ。
著:N
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プロテイン女子に恋して
「タピ活」の次は「筋活」らしい。
正直、今更ブームに乗っかるのが億劫だという自分がいた。
筋活
僕らの時代の教科書にはそんなこと載ってなかった(今も載ってないよ)。でも筋トレはそもそも最初から存在しているし、ましてや健康のためにやることだから、いつ始めても遅すぎるということはない。
最悪、ブームに乗りそこなっても、「いや普通に太ってきたから筋トレを始めたんですよ」という言い訳が成り立つ。
ていうかネタじゃなく本当に太ってきた。
諦めて「デブ活」に走ってもいいのだが、シュッとして見られたいといういやらしいプライドが捨てきれない。
女子とプロテイン
幸い、よく知ってるタレントの卵の子が「筋活女子」としてちょっと有名になりかけていて、SNSに見事なシックスパックの腹部写真をアップしたらそこそこバズったらしい。
筋活の先輩に教えを乞うため、その子が働いているカラオケスナックに行った。
そこで勧められたのが「ザバス」。
特にミルクプロテインのプレーンといえばいいのか、緑の430mlパックを毎日飲んでいること、あとその子はキックボクシングも習っているのだが、トレーナーの人も愛飲していることなどを意気揚々と語りだした。
なんやかんやで筋トレにプロテインは必須のようである。
よほど筋肉の話に飢えていたのか、ザバスの魅力を説明している時の彼女の目は輝いていた。
これだけ会話が盛り上がったんだから、シックスパックのお腹を生で見せてくれるかな、と思ったが、そんなサービスはないまま終わってしまった(笑)。
男性の方から「見せて」って言ってしまうとコンプライアンスマンが飛んでくる。
与えられるのをおとなしく待つ時代(何だそれ)。
ザバス初体験
翌日、人生で初めてザバスを体験。
パックの外見からは飲むヨーグルトのようなイメージを抱いていたのだが、
実際飲んでみると、最初に浮かんだ表現は「さっぱり」。
思っていたより数倍さっぱりだ。驚いた。
ヨーグルトのトロッとした感覚はほとんどなく、更にビフィズス菌たっぷり系の乳飲料ともだいぶ違う。
なんというか、良い意味で「水分」をダイレクトに感じる。
公式サイトによると、おすすめの摂取ポイントのうちのひとつに「運動後」と書いてあるが、まさに運動したあとグイグイいけるタイプのドリンクである。
スポーツドリンクのような糖分によるベタつきがない。
先入観だけで「プロテインドリンクの類って、飲み口が重たくて余計に喉が渇きそう」と思っていたが、全くそんなことはなかった。
筋活女子とスナック
ありがとう筋活女子よ。
これを機にもっと積極的にプロテインを摂取していこうという前向きな気持ちになれた。
これはあの子にお礼を言わなければならない。
というわけで2日連続でカラオケスナックに向かった。
ところがタレントの卵さんはいつになく浮かない表情。
オーディションにでも落ちたのかと思い尋ねると、「先月は舞台とかで忙しかったからあまりシフトに入れなくて」。
要するに次の給料日まで金欠で困っているがゆえの暗い顔だった。
「当分、200mlパックのザバスしか買えないですよ」。
せっかく若い女の子が筋活を頑張っているのだから、好きなだけ飲ませてやりたいという親心が芽生えてしまい、近所のスーパーに走ってラージサイズのザバスを大人買いし、プレゼントしてあげたところ、一瞬で目に輝きを取り戻した。
「ありがとうございます!ありがたく毎日飲みます!」
いやいや、こんなドリンクくらい、どうってことはない。「今日はとことん筋肉トークしましょう!ラストまで延長してくれますよね!」
ふらふらに酔っ払ってしまった。
翌日ふと財布を覗けば、今度は僕が給料日まで綱渡り状態に。
ザバスの画像を眺めながら腹筋する生活がしばらく続きそうだ。
著:N
酒場のレモン
「こだわり酒場のレモンサワー」という名前には、武器が2つもある。
「酒場感」と「レモン感」だ。
この全方位的な訴求力が、根っからの酒好きと、スタイリッシュを求める若者の両方を取り込むことに成功した。
飲み会の新定跡
「若者の酒離れ」と言われているが、決してアルコールを受け付けない体質の若者が増えたわけではない。
もともとアルコールを受け付けない体質の人や酒の席が好きではない人が、しっかり意思表示できるようになった社会環境の影響はあるだろう。
しかし実際、ハイボールは若いサラリーマンの間で人気だし、大学生はコンビニでやたらとストロングゼロを買っている。どちらも決して弱い酒でもなく、むしろ速攻トライで酔わせてくれる。
変わったのは、若者の味の嗜好かもしれない。
「飲みやすくて、分かりやすい刺激がある味」に現代の若者は惹きつけられやすいようだ。
ビールの複雑な苦みを美味しいと思えない若者は増えてる気がする。
若者の酒離れの本質は「ビール離れ」ではないか。
飲み会などでの「とりあえずビール」という同調圧力には屈したくないが、最初からカクテルだと浮いてしまう。
ハイボールがブームになったのは「一杯目で注文しても違和感がない」という理由もあると勝手に分析している。
そんな「飲み会における初手」の新定跡として、ハイボールと肩を並べてきたのがレモンサワーだ。
レモンサワー市場のけん引役
2018年2月に発売された「こだわり酒場のレモンサワーの素」は、炭酸水を注ぐだけでちょうどよい濃さのレモンサワーが作れるリキュールとして、その手軽さと本格的なレモンフレーバーで当初の予定を大きく上回るヒットとなった。
そして2019年に入ってから、RTD缶「こだわり酒場のレモンサワー」と業務用コンクを発売。
サントリーによると、2019年には、前年比2桁増で拡大しているレモンサワー市場の50%をけん引しているそうだ。
何よりも「酒場」という単語が昔気質な雰囲気でかっこいい。
炭酸で割っても飲みやすく、かといって軟弱なイメージはない。
昭和から三代続く老舗酒場で炭酸のホッピー割りを飲んでいる感じ。
酒を酒で例えるのはトリッキー過ぎるけど、「形から入る」のが好きなタイプの人にとっては、この「酒場感」に浸れるというのが大きい。
サントリーが提供する公式アルミタンブラーも味があっていい。
中身が見えないというのが、しつこいようだが「酒場感」をより高めてくれる。
何が入ってるのかよく分からない酒を飲んで大人ぶっている、あの感覚。
だけど中身はもちろんレモンサワー。
アルミ素材がキレのある冷たさを最後までキープする。
飲みやすくてほどよい刺激。若者の好みにフィットしつつ、酒場仙人のような初老紳士が片手にしてもしっくりくるタンブラー。
レモンサワーが持つ「トーン」と絶妙にマッチしているデザインも魅力。
レモンというパワー
「レモン」ってワードそれ自体が、若者風に言うと「刺さる」。
料理のサブタイトルに「瀬戸内レモン風味」と添えるだけで美味しさが倍掛けになる。レモン味に外れはないという無敗神話。
居酒屋のサワー系メニューで、ピーチやらカルピスやらのフレーバーが並ぶが、レモンをそのひとつとして扱うのは、レモンの持つポテンシャルの無駄遣い、とでも言うかのごとく「レモンサワー」を独立した酒としてブランド化させたアイディアが偉大。
そして「こだわり酒場のレモンサワー」がこだわった本物のレモン感。
レモンを丸ごと漬け込んだ浸漬酒がベースだそうで、レモンの香りがしっかり。甘さも控えめなので、食事にも合わせやすい。
それにレモンはなんといっても酸味という「分かりやすい刺激」がある。
更に炭酸をプラスするのだから、シャープな刺激のアンサンブルに観客総立ち。
「酒場感」と「レモン感」の両輪がハイケイデンスでフル稼働しているこのスピード感に乗っかれば若者文化に染まれるんじゃないかと、昭和生まれの私は酸っぱい夢を見たい。
著:N
ほろよいオンライン
オンライン飲み会
結論から言うと、オンライン飲み会は面白い。いや、面白いことに気付いた。
緊急事態宣言が出てから1か月が経とうとしているタイミング。少し出遅れた感は否めない。もっと早く体験しておけばと後悔している。
ただひとつ思ったのは、実際にやってみて、リモートでの会話が意外にスムーズで快適にこなせるのを知った人も多いのではないか、ということ。
5Gの到来が喧伝されているこの時代においても、おじさん世代には、未だにいっこく堂のイメージというか、声が遅れて相手に届くし画質も顔が識別できないくらいザラザラと思っている人も多い。
各種オンライン会議アプリやそれを支える通信技術がこれだけ進歩しているんだ、という事実をネットに疎い層にも啓蒙できたことによって、コロナ終息後もオンライン飲み会が更に普及していく可能性は高いと思っている。
…と言いつつ、Twitterで「オンライン飲み会」を検索してみたところ、「オンライン飲み会 断り方」なんていう第2検索ワードが上位にドン(笑)。
どうやら若年層にとってオンライン飲み会はもはや定着しているのが前提で、そこから更にどう断るか、にまで発展しているようだ。
家呑みへの抵抗
やはり参入するのが遅かったか。筆者のように開き直れない中途半端な世代が一番何事にも乗り遅れる。鬼滅の刃もステイホーム状態になってから今更読み始めた。
zoomどころかLINEもしていないような周囲の飲み仲間をオンラインに誘い込むには2段階のハードルがある。
まずアプリの操作方法を把握してもらわないといけない。これが大変。ただまあ、それは時間さえかければ何とかなる。
もっと問題なのは「家呑みしない主義の人間」に家呑みの環境を整えてもらうこと。むしろこっちのほうが一筋縄ではいかない。
外呑み派は毎日のように限界までハシゴする癖に、なぜか「家で呑むようになったら終わり」という意味不明な思考回路を持っている。筆者にもそういうところがある。
とにかく外で飲み歩きたい人達にオンライン飲み会を受け入れてもらうためには、冷蔵庫に酒を揃え、部屋を片付ける、家呑みインフラの整備が急務なのだ。
オンライン呑み会に合うお酒
オンライン飲み会は居酒屋と違い、お店で用意されている酒を注文するわけではない。どんな酒を買ってきても自由。
つまりここで個人のセンスが問われるわけだ。
これはなかなかに怖いことです(笑)。なんだったら買う酒のグレードで経済格差も見透かされる。学生時代に質素な弁当を隠して食べたあの気持ちに近い。まさにロックダウンしたい記憶。
庶民である筆者がオンライン飲み会で「使える!」と思ったお酒をひとつ挙げるならサントリーの缶チューハイ「ほろよい」。
スーパーなら1缶100円ちょっとで買えるし、何よりバリエーションが豊富でカラフル。全種類揃えたって金額的には知れている。これを自宅のPC前に並べて「zoom映え」を狙う。
なんせお金に余裕のある方々は高級なボトルを画面越しに見せびらかしてくる(見せびらかしてる意識はないんだろうけど)。見た目の可愛さとかで工夫を凝らして高級感に立ち向かうしかない。
個人的に好きな味はミックスフルーツ。昭和の銭湯では定番だった瓶のフルーツ牛乳に近いような、懐かしくもスッキリした喉ごし。20代の家呑み派を意識して寄せたテイストであるとも言える。
酒場の意義
これからの社会情勢がどうなっていくのかは予測もつかない。でもこれだけ確かなのは、筆者が共にオンライン飲み会を楽しんだ飲み仲間の何割かは元々「酒場」で出会った関係。
人と人とのリアルでの繋がりがあってこそ、会えない時間を埋めるために通信技術が進歩してきたのは間違いない。
自粛が明けて、人々が酒場に戻ってくる頃には、カウンターで意気投合した他人同士が「今度オンライン飲み会する?」みたいなノリで連絡先を交換しあう風景があちこちで見られればいいな、と願っている。
著:N
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